

学校のICT環境の整備の取り組み
GIGAスクール
学びを止めない。
学校のICT化を通して、子どもたちと先生に、教育の持続可能性を
2019年、国の方針で「GIGAスクール構想」が始まりました。これは児童・生徒に1人1台のタブレット端末を貸与し、並行して高速大容量の通信ネットワークを整備する取り組みです。コロナ禍により学校への登校が困難となるなか、教育分野におけるICT化の必要性が顕在化し、前倒しで端末の配備が始まったのです。IT機器のリース事業を手掛けるJECCは、前例のない課題を乗り越え、数多くの端末を提供。これにより、児童・生徒の学びを継続させるとともに、学校における労働環境の改善にも貢献しました。2人の担当者が当時を振り返ります。
MEMBER

文教・ヘルスケア営業部
営業課 エキスパート
1992年 新卒入社
入社以来、一貫して営業を担う。文教(自治体)チームリーダー。チームメンバーの総括と情報集約を担う。

文教・ヘルスケア営業部
営業課 リーダー
2014年 新卒入社
各自治体の教育委員会における調達動向の精査のほか、調達の課題整理と解決に向けた提案活動を実施。その事例をチーム内で共有する。
コロナ禍で一変。教育の持続可能性のために、わずか1年で全児童・生徒に端末を
- JECCは 、設立以来「コンピュータを教室に」をスローガンに掲げ、教育現場でのICT機器の普及を進めてきた日本教育情報機器(ECS)と合併し 、教育用ICT機器の提供をさらに強化しました。文部科学省が想定する配備台数は、2010年代初頭から4〜5人に1台という指針で続いてきましたが、令和を迎え、コロナ禍により状況は一変しました。


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Ken.U. PC教室の配備から、1人1台の端末配布へと一気に舵を切ることになったのです。それがGIGAスクール構想です。主導する文部科学省も、まさか短期間で全児童・生徒に端末を用意することになるとは夢にも思わなかったことでしょう。JECCも支店の人員を総動員するほどの総力戦となりましたが、結果的には約1年で成し遂げることができました。
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Satoshi.M. JECCが主にお取り引きいただいているのは、各自治体の教育委員会です。学校単位ではなく、自治体単位の大きな規模で端末をご提供しています。教育委員会には、元々教育現場で先生として勤務されていた方や、異動や出向により指導主事に就任された方、また事務職として従事されている方がいらっしゃいます。私たちは現場の状況に寄り添いながら、ご意向をお伺いしていますが、やりたいことと現実にはギャップがあることも多いです。
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Ken.U. 教育現場では、常により良いスペックを求めたい。しかし、行政的な観点では、端末をできるだけ長く使ってほしい。ここにギャップが生じ、ご予算の面で、現場の希望をかなえることが難しいという声もよく耳にしました。
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Satoshi.M. ただ、官公庁など公的機関との取り引きにおいては、JECCが築き上げてきた知見が活かせます。たとえば、民間同士の取り引きにはない官公庁独自の商慣習があります。そういった観点から、お客さまのご要望を理解し、あらかじめ配慮することで、スムーズな調整が可能となり、契約調整のご担当者さまから感謝の声をいただくこともありました。
前例のない事態のなか、「学びを止めない」ために、暗中模索の納入作業
- GIGAスクール構想の目標は、児童・生徒に個別かつ最適化された創造性を育む教育を提供し、平等な教育機会を得られる社会を実現することです。また、デジタルネイティブ世代に求められるリテラシーをもたらし、社会全体のICT化を推進すること。JECCはECSと合併し、効率的かつ持続可能な社会実現への貢献を目指して、1989校に約31万台もの端末を納入することができました。


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Ken.U. 補助金の予算内で収めるためにはどうしても価格を抑えた端末になりますが、教育現場のICT機器導入の支援に役立つ各種ファイナンスサービスを駆使し、リース制度を活用いただくことで、単年度の予算内でもより良いスペックの端末を手配する方法を提案いたしました。
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Satoshi.M. 難しいお題ではありましたが、教育委員会が要望する端末の手配に対して、有益な提案を行うことができたと思っています。
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Ken.U. ただ、納入にはサプライチェーンリスクという困難がありました。児童・生徒に配布される端末はタブレットなのですが、2020年当時グローバルで半導体が不足し、タブレットの生産がストップしました。しかし、納入は導入希望期日に間に合わせる必要があり大変でした。
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Satoshi.M. まず、コロナ禍で不要不急の外出は自粛せざるを得ないなかでしたので、商談にも苦労しました。
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Ken.U. そして、国への補助金申請にも苦戦したのを覚えています。教育委員会の方も私たちも、GIGAスクール構想における補助金を使ったリース導入の経験がありませんでしたので、お客さまとともに申請に関する情報を毎日調べながらの暗中模索の日々でした。
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Ken.U. しかし、当時は『学びを止めない』という現場の熱意を強く感じていたことが、自身のやる気につながりました。わが子が当社のリース機器を使用している時期があり、自宅に当社資産のシールが貼られたChromebookタブレットがあると、不思議な感覚でした。そして、子どもがどのように端末を活用しているかを直接見聞きできたことは、感慨深い経験でした。
学校という職場・現場の持続可能性のために。校務のデジタル化を推進
- 近年、教職者の就労環境に課題があるといわれています。文部科学省によると教師の精神疾患による休職者数は増加しており、2022年度には6539人に上り、前年度から642人増加しました。また教員受験者数も減っており、2012年には約15万9000人いた受験者数は、2022年には約10万7000人に減少。このような背景を受け、文部科学省は「校務DX」と題し、教育支援のデジタル化の推進を決定。2026年から校務支援システムの統一化を図る予定となっています。
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Satoshi.M. GIGAスクール構想により、学びのデジタル化は進められましたが、先生方の教育スキームにおいても、ICT化の可能性が残っていると思います。たとえば、校務システムは、自治体ごとに異なるため、先生が他の市町村に異動すると、新たなシステムの使い方を再度習得する必要があります。
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Ken.U. システムが統一できれば、このような手間はなくなり、勤怠管理や成績、出欠なども一元的に管理できます。私たちはハードウェアの手配が主な業務で、システムやソフトウェアの選定そのものに直接は関わっていませんが、端末選定を通じて間接的にご協力しています。


2nd GIGAスクールが開始。タブレット端末の持続可能性も問われる今後
- さらに、より進んだデジタル活用を目指し、 2nd GIGAスクールが始まっています。タブレット端末の買い替えサイクルに対応し、都道府県ごとの共同調達を中心に2024年度から順次実施されています。
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Ken.U. 前回は時間的制約から、リースではなく購入を選択された教育委員会も多かったため、本当に必要なスペックが備わっていなかったケースもありました。たとえば、端末の堅牢性や軽量性。小学校では児童がランドセルに入れて運ぶので、軽くて頑丈でなくてはなりません。2nd GIGAスクールでは、『タブレット端末の持続可能性』も重要になっています。
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Satoshi.M. 大きく変わったのが、故障時の予備機という発想が生まれたことでしょうか。児童や生徒が使うので、どうしても扱い方によっては故障が発生します。そのため、予備機に対しても補助金が適用され、当初からリース調達に盛り込むことが可能となりました。
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Ken.U. 少子高齢化で児童・生徒も減って、教師も減っています。コロナ禍で『学びを止めない』という機運が一気に高まり、環境整備が急速に進むなかで、本当にいろいろなテーマが洗い出されました。お客さまから直接ニーズを聞いて、何が打ち手となるのかを考えていきます。私たちだけでは解決できない課題は、パートナーとの協業で対応し、教育機関からお話を伺うなど、定期的に接点を持つようにしています。これからも、社会全体を見通しながら、JECCが教育におけるサステナビリティ実現の一助になれることを願っています。


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